2026-05-28

私の世界の見え方を変えてくれた『トラベラーズOS』について

先日2026年5月末、東京・中目黒で開催されたトラベラーズノート20周年記念イベントにゲストとして参加し、1時間ほどのトークライブをさせていただきました。

これまでも著書『毎日がもっと楽しくなるトラベラーズノートアイデアBOOK』などで、トラベラーズノートの使い方や私なりの向き合い方についてご紹介してきましたが、この日のトークでは、ノート術や記録のテクニックというよりも、トラベラーズノートという存在がまとっている世界観や思想、その魅力について特に時間をかけてお話しさせていただきました。

私はトラベラーズノートがまとうそうした世界観が、使う人の中にも少しずつ染み込み、その人自身のものの見方や行動、世界との向き合い方そのものを変えていく状態を、「トラベラーズOSがインストールされた状態」と呼んでいます。

そして先日のトークの中でこの「トラベラーズOS」という考え方をご紹介したところ、思った以上に共感してくださる方が多かったことがとてもうれしく、同時に、なぜ自分は11年経った今もトラベラーズノートに惹かれ続けているのだろうと改めて考えるきっかけにもなりました。

※OS(オーエス)とは、パソコンやスマートフォンを動かすための基本ソフトウェアのこと。WindowsやMacのmacOS、iPhoneのiOSなどが代表例で、画面の表示やキーボードの入力、アプリの動作など、コンピューター全体の動き方を決める土台として機能するもの。ここでは、トラベラーズノートを使うことで、ものの見方や行動のベースが少しずつ変わっていく感覚を表す比喩として使っています。

そこで今回は、現時点での私なりの「トラベラーズOS」についての考えを書き残してみようと思います。

「トラベラーズOS」とは?

改めて、私が考える「トラベラーズOS」の定義とは

トラベラーズノートを使い続けることで、ものの見方や感じ方が少しずつ変わり、旅や日常の中に新鮮な気づきや発見が増えていく状態

私はそんなふうに捉えています。

以前の私は、トラベラーズノートの魅力をどちらかといえば感覚的に捉えていました。

手に取るだけで旅に出る前のような高揚感がある。
日常の何気ない出来事や風景を、以前よりも能動的に楽しめるようになる。

そんな前向きな気持ちを与えてくれるノートだと考えていました。

けれど使い続けて11年目を迎える今は、もう少し違う見方をしています。

トラベラーズノートは、単に好きなものを楽しく記録するためのツールではなく、世界を見る目そのものに影響を与える存在なのかもしれない。

そんなふうに思うようになりました。

それは、トラベラーズノートを手にする前と後で、世界を見つめる自分の眼(め)そのものが少し変わった気がしているから。

たとえば、以前なら見過ごしていた名もなき街角の風景に足を止めるようになったり。
旅先で目に留まるものが、ガイドブックに載っている名所だけではなくなったり。

同じ景色を見ているはずなのに、そこから受け取るものが少しずつ変わっていく。

そんな変化が、自分の中で確かに起きている。

世界が変わったわけではなく、変わったのは、それを見る自分の眼のほう。

私が「トラベラーズOS」と呼んでいるのは、まさにその変化のことです。

日常に旅人の目を持ち込む「トラベラーズOS」の存在と価値

トラベラーズノートに出会う前の私も、もちろん無類の旅好き、街歩き好きでした。

けれど忙しい毎日のなかでは、意識が仕事のTODOや悩みに向いていることも多く、目の前の世界をじっくり味わう余裕はあまりありませんでした。

それでも時間を見つけては外へ出かけ、旅先ではその時間を夢中で楽しんでいました。

ところがしばらくすると、その旅の記憶として頭に残っているのは写真に写った景色や場所ばかりだということに気づきました。

どんな風が吹いていたのか。
どんな音が聞こえていたのか。
何に心が動き、何を面白いと感じていたのか。

そうした“手ざわり”のような記憶は薄れ、楽しかったはずの時間がうまく思い出せないことに、どこか寂しさを感じていました。

そんな時に出会ったのが、トラベラーズノートです。

革の表紙を手に取るだけで、どこか遠くへ旅に出る前のようなワクワクした気分になる。
何気ないことを書いても、少し特別な記録に思える。

その感覚に惹かれて、まずは旅や街歩きの記録をノートに残し始めました。

すると、旅先で目に入るものや心が動く瞬間を、以前より少し丁寧に拾うようになっていきました。

普通のノートなら、今日何をしたかを書く。
でもトラベラーズノートなら、今日何を発見したかを書く。

普通の手帳なら管理が中心になる。
でもトラベラーズノートでは、好奇心や出会いが中心になる。

やがてその視線は、旅先だけでなく日常にも広がっていきました。

「今日も何か面白いものが見つかるかもしれない」

そんな感覚で街を歩いたり、物事を眺めたりすることが増えていき、
日常の過ごし方そのものが、少しずつ“旅の延長”のような感覚に変わっていきました。


「トラベラーズOS」が見せてくれる世界

トラベラーズノートを通して「トラベラーズOS」が自分の中にインストールされると、世界の見え方が少しずつ変わっていきます。

それは特別な能力が身につくというより、もし自分がこの街を初めて見る外国人だったらどう見えるだろうと考えるような、視点の置き方そのものが変わっていく感覚に近いものです。

実際に私は、街を歩いているときに目に入るものが少しずつ変わっていきました。

新しくできた商業ビルのそばに残る、昔ながらの喫茶店のカタカナの看板や、渋い居酒屋の暖簾。
バス停の屋根や駅の壁のタイルのような、街角の色やかたち。
夕食の買い物で立ち寄ったスーパーのお菓子売場に並ぶ、老舗のキャンディの包装紙の柄。

それらは取り立てて特別なものではないのに、なぜか気になる存在として、これまでとは違う意味を持って見えてくるようになります。

同じものでも、どこに目を向けるかで立ち上がる意味が変わる。

「トラベラーズOS」とは、そうした世界のフレーミングを切り替える感覚そのものだと考えています。


そしてその結果、日常の中にこれまで見えていなかった面白さが立ち上がり、いつもの風景が少し違って見えてくる。

それは世界が変わるというよりも、世界の中のどこを見るかが変わることで起きる変化です。

「トラベラーズOS」とは、見慣れた日常の中にまだ見えていない面白さを立ち上げるための視点の切り替え装置なのだと私は感じています。

おわりに

11年使い続けた今でも、トラベラーズノートを開くたびに「今日はどんな面白いものが見つかるかな」と思います。

それは旅先だけでなく、ふだん自分が住んでいる街でも同じです。

自分を取り巻く世界はそんなに変わっていなくても、自分の見方が少し変わるだけで、毎日は驚くほど豊かになる。

だから私はこれからも、このノートと一緒に街を歩き、旅をし続けるのだと思います。

もしこの記事が、みなさんにとって自分だけの「トラベラーズOS」を見つけるきっかけになっていたら、とてもうれしいです。

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